尾形家は、気仙沼湾の東岸の岬に位置する旧網元の家である。主屋は、規模桁行12間、梁間6間の木造平屋建てで、寄棟造、茅葺き屋根の建物だった。家蔵の普請関係文書(御手伝帳)から、文化7年(1810)という建築年代が確認されており、歴史的価値のある民家建築で、工学院大学 後藤研究室では、国の登録有形文化財への登録をめざし、2010年8月に調査を行っていた。同家にはまた、盆棚等の古くからの生活習俗やそれに関わる装備もよく残されていたので、国立歴史民俗博物館も調査を行っていた。
震災発生2週間後に「屋根だけ残った」という知らせを聞き、現地入りし確認したところ、建物は津波により押し流され、元の場所から約100m移動し、90度回転して屋根が形を変えずに残されていた。自衛隊の配慮等によって、遭難者探索のための緊急撤去を免れることができた為、1か月後には後藤研究室と国立歴史民俗博物館の有志が中心となり、地元の関係者と協力して尾形家を修復保存していくのための団体として設立した。